研究概要 |
歯科補綴物のフレーム材料は,機械的強度の観点から一般的に金属材料が選択されている.しかし,金属材料では,患者の審美的要求を満たすことはできない.そこで,審美性を得るために金属にセラミックスや樹脂を接着した複合材料を利用している.金属とセラミックスや樹脂の接着には,リテンションビースを用いた機械的結合やプライマーを用いた方法などが行われている.本研究は,金属と樹脂の接着について,今までとは異なる新しい接着方法としてレーザー光を用いた方法について検討を行ったものである.本年度の研究は,金属としてチタンインゴット(CPチタンJIS2種)およびチタン合金インゴット(Ti-6Al-7Nb合金)を用い,樹脂としてはPET樹脂を用いてレーザー光による接着を行った.レーザー光としては,1064nmの波長のNd:YAGレーザーを用いた.レーザー照射は,印加電圧を変化させ,パルス幅を4ms,スポット径を2.Omm,パルス周波数を1Hzの条件でインゴット上に樹脂を置いて加圧下で一回行った.接着強さの測定は,せん断圧縮試験によって行った.レーザー光の焦点位置は,マイクロスコープによって透明な樹脂を通して金属板表面に合わせた.また,金属表面は,サンドブラスト処理と鏡面研磨処理とした.実験の結果,チタンとPET樹脂をレーザー光で接着することが可能であった.しかし,光エネルギーが大きすぎると金属の溶融や樹脂の焦げ付きが起こり,最適なレーザー照射条件の設定の必要性が示唆された.
|