研究概要 |
新規セラミックプライマーを用いたレジンセメント接着システムの構築を目的とし,2つの市販ポーセレンプライマーを評価した。また,劣化の機構を解明するためこれらの酸性モノマーに含まれる4-MET,MDPを0,0.1,0.05,0.01,0.005mol/mlにエタノールで調整し,セラミックスに対する接着性を検討した。コントロールは同濃度のHCIとした。その結果,市販ポーセレンプライマーの初期接着強さは約15MPaと同等であった。4-MET,MDPは各濃度間で同程度であり,高濃度になるとともに上昇し,0.1,0.05mol/mlでは約14~16MPaを示した。HClも同様な傾向を示したが4-MET,MDPより高く,0.1,0.05mol/mlでは約23~24MPaであった。HClは解離度が高いことから,γ-MPTSは酸性モノマーの加水分解で生じるH^+の総量が多いほど活性化されることを示しいる。サーマルサイクル後では4-METを含むポーセレンライナーMは約12MPaであり,MDPを含むクリアフィルアクリベーターは約3MPaであった。4-METではどの濃度においても10~11MPa,MDPでは6~8MPaに低下し,市販と同様の挙動であった。一方,HClでは低下は小さく9~17MPaであった。サーマルサイクル後の破壊様相はHClを除き殆ど界面破壊であった。 4-MET,MDPはHClに比べて塗布後の乾燥で気化しないため接着層に残り,サーマルサイクル過程で加水分解し,生じたH^+が接着層を破壊し,劣化が大きくなったものと考えられる。また,MDPの劣化が4-METより大きいのは分子量の大きいMDPが陶材面へのシラン分子の吸着抑制効果が大きかったからと思われる。 以上から,劣化の少ないレジンセメントの接着システムの構築には分子量が小さく解離度の高い酸性モノマーが必要であることが示された。
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