研究概要 |
金属-軟質レジン間の軟質接着システムを確立することを目的として,フッ素原子の導入方法をさらに改善した接着性レジンシステムを試作検討した. 1)TBBOに代わる重合開始剤として,疎水性のBPO-アミンを用いたフッ素系の軟質接着性レジンシステム(TFEMA-PTFEMA/BPO-アミン)を試作した.試作したレジンは重合開始剤との相溶性も優れており,重合硬化挙動や長期接着耐久性も良好であった.また,硬化物の吸水率はTBBOを用いたレジン硬化物の吸水率の1/10以下であり,従来のMMA-PMMA/BPO-アミンレジンの1/3以下に低下した. 2)モノマーとしてメタクリレートの代わりにアクリレートを導入した場合の影響を明らかにするために,アクリレート系の2,2,2-トリフルオロエチルアクリレート(TFEA)と1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルアクリレート(HFIPA)のラジカル重合反応性や疎水性を,TFEMA,HFIPMA及び従来のMMAなどのメタクリレートと比較検討した.モノマーの重合反応性は,TFEA>MMA>TFEMA>HFIPA>HFIPMAの順に低下し,疎水性は,MMA<TFEA<TFEMA<HFIPA<HFIPMAの順に増大した. 3)TFEMA-PTFEMA/TBBOレジンが従来のレジンと比較して吸水性が改善しないのは,TFEMAの重合性がやや低いことが原因と考えられるので,液成分に重合性の優れたTFEAを添加した(TFEMA/TFEA)-PTFEMA/TBBOレジンを試作した.試作レジンの重合硬化挙動は,TFEA含有率の増大とともに複雑に変化したが,TFEMA-PTFEMA/TBBOレジンのモノマー液に20wt%のTFEAモノマーを添加することで,重合硬化性を改善できることが明らかとなった.20wt%のTFEA添加レジンのEP8MA処理した純金に対する耐水接着において,熱サイクル2000回以降の接着強さ維持率はかなり安定化する傾向が説められた. このように従来の硬質接着性レジンシステムにフッ素原子を導入することで,歯科用金属に対してナノ分子凝集構造を制御した軟質レジン接着システムが創製できることが明らかとなった.
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