研究概要 |
本研究は,マルチフィジックス解析による手法を利用して補綴主導型コンセプトによるインプラント治療の診断・治療・予後・治療結果のフィードバックを統合した新しいシステムを構築することを目的としている。平成22年度は,(1)有効歯根表面積計測システムの確立,(2)咬合接触域面積の算出,(3)咬合支持能力指数の算出,(4)インプラント体表面積および咬合支持能力歯数の算出を計画した。 (1)について,その目標を達成することができ,その成果を学会及び論文発表した。(2)は,上下顎の咬合面形態をデジタルデータとして抽出することは可能となったものの,上下の歯の咬合に関与する部分を抽出し,表面積の算出することが困難であることが判明した。このため,(3)の達成も困難であることから,(4)を異なる手法で行うことにした。すなわち,CTデータからインプラント埋入部位の骨密度を算出し,埋入予定のインプラント表面積と組み合わせることでインプラント埋入部位の予後を予想するシステムが構築できると考えた。これを検証するため,これまでインプラントを埋入した患者の埋入部位別の平均骨密度,埋入したインプラントの表面積,埋入時および埋入後の経過を調査した。その結果,これまでの報告と同様に骨密度には個人差と部位差が存在するものの,骨密度が不良な症例では予後も不良であり,客観的な骨密度の閾値が明らかになった。このことから,骨質から見たインプラントの予後予想がある程度可能となり,インプラ治療におけるマルチフィジックスシミュレータの一端を開発することができた。
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