研究概要 |
本研究は歯科インプラント上部構造物固定に使用する最適なセメントを開発するための材料学的研究である、実験では試作セメントを作成しその組成ならびに硬化体の構造とセメントの物性との関係を調べる。さらにセメント維持力を動的負荷により評価しインプラントへの補綴物固定に必要な材料学的根拠を検討し歯科インプラント治療をさらに容易に成功させる新たなセメント開発へつなげることを目的としている。平成21年度は、インプラントバットメントにセメント固定した鋳造冠の繰り返し荷重負荷後の保持力について実験と検討を進めた。昨年度科研費補助金にて購入・設置した衝突摩耗試験機にてインプラントアバットメントへ仮着用セメントで固定した全部鋳造冠に荷重10kgfで100,000回まで繰り返し荷重を負荷させ、その後のアバットメントへの保持力を評価した。セメント種類により繰り返し荷重の影響の現れ方は異なることが明らかになったことからセメント組成ならびにセメント硬化体構造の違いがその要因ではないかと推測された。また、保持力のワイブル統計分析から繰り返し負荷はその保持力に大きなばらつきを与えていた。各セメント自体の機械的性質が異なっているにも関わらず、負荷100,000回後の保持力には統計的な有意差が表れなかった。このことから、静的な条件で測定したインプラント用セメントの機械的強さはアバットメントに固定する鋳造冠の保持力を予測するための決定的な因子となりにくいことが推察された。
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