研究概要 |
平成20年度の科学研究費課題において歯髄における幹細胞の分布状態を調べた結果、歯根部歯髄と比較して歯冠部歯髄に分裂が盛んな歯髄幹細胞と思われる細胞が多数認められた。また、細胞の局在は象牙芽細胞から離れた歯髄の中央部に認められた。以上の結果から判断し、歯髄幹細胞を確実に採取できる採取部位として歯冠部歯髄中央付近とし、この部分から歯髄を採取することとした。平成21年ではこの結果に基づいて採取した歯髄細胞を培養した後、CD34,44,45,90について表面抗原をフローサイトメーターにて分析を行ったところ、CD44,CD90はポジティブであり、血液幹細胞系であるCD34,CD45はネガティブであった。また以前の研究より、FGF添加培地中にて培養することで間葉系の歯髄幹細胞が増幅されることが示されている。平成22年においては、平成21年度の結果より得られた歯髄幹細胞をアテロコラーゲンゲルに懸濁し実験動物である免疫不全ヌードラットの上顎第1臼歯口蓋側に形成した歯周組織欠損部に移植し、歯周組織の再生状態について術後3週目に試料を回収し組織学的に観察した。コントロールは細胞を含まないアテロコラーゲンゲルとした。その結果、実験側においては歯根面に結合組織性の付着が認められたのに対し、コントロール側では上皮のダウングロースが生じ付着の獲得を認めなかった。しかしながら、実験側に明らかなセメント質形成は認められず、また両群ともに歯槽骨の再生も認められなかった。
|