研究概要 |
今年度は抜歯窩及び頭蓋骨欠損部に,粉砕歯とヒドロキシプロピルセルロースを混ぜたゲル状の材料を填入し,骨形成に及ぼす影響を調べる目的で,μCTを使用して,同一個体で経時的な観察を行った.また,粉砕した歯は生体内において,吸収して骨に置き換わるのか,残存して骨形成の核となるのかを検証するために,組織切片を作成し,歯の象牙質に特異的な蛋白であるDMP-1の抗体を利用して免疫染色を行った.免疫染色には,酵素抗体法と蛍光抗体法を用いた.その結果,粉砕歯の粒子が小さい場合,酵素抗体法より,抜歯窩内の結合組織にDMP-1陽性に染色された組織像が確認できた.また,蛍光抗体法よりマクロファージ様の多核細胞に取り込まれている組織像が観察された.更に粒子が大きい場合は,粉砕歯の周囲で骨再生が起こっている組織像が観察された.更に填入後4週において,粉砕歯が抜歯窩に存在していることが確認できた.填入した粉砕歯は吸収され,骨に置換されると考えられていたが,今回,粉砕歯の粒子の大きさの違いにより,骨再生の核となるか,あるいは貪食されることにより二次的骨形成に関与するという,二つの様相があることが示唆された. 一方,頭蓋骨欠損部に填入したモデルでは,μCTによる硬組織画像解析の結果,対照群とくらべて骨形成量が多い傾向が見られたが,有意差は認められなかった.今回の研究により,粉砕歯を利用した骨移植材は骨形成を促進に役立つことが示唆されたが,骨誘導能は限定的なものであることが判明した
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