研究概要 |
窒素含有bisphosphonates (N-BPs)は骨吸収の亢進を伴う疾患に広く応用されている.NBPsが発熱などの炎症性副作用をもつことは知られていたが,最近予想外の副作用が注目されている."顎骨壊死とそれに続く顎骨の露出"である。口腔細菌と歯科治療の関与が予想されるが,発症機序不明で,積極的な予防・治療の方法はない.我々は以下を見出した.【マウスでの検討】(1)NBPsの壊死作用は細菌感染により促進される.(2)窒素非含有bisphosphonates (Non-NBP)のetidronate (Eti)はNBPsの細胞内取り込みを抑制することにより,NBPsの壊死作用を抑制する.(3)Etiは既に骨に蓄積しているNBPsと置き換わる(NBPsを除去する)効果もあり,NBPsの代用薬としてEtiを利用できる可能性がある.【患者へのNBPsの代用薬としてEtiの応用】我々は骨粗霧症患者9例,癌骨転移患者の6例,計15例においてNBPsによる顎骨壊死を経験した.上記基礎研究成果を踏まえて,骨粗鬆症患者4例,癌骨転移患者の2例,計6例に,Etiへの切り替えを試みた.その結果,Etiに切り替えた患者は,切り替えなかった患者に比べ早期に腐骨分離し良好な治癒傾向が見られた.これら症例の一部を本年J Oral Maxillofac Surgに報告した.今回の成績は,確立した治療法が無いNBPsによる顎骨骨髄炎・顎骨壊死に対し,Etiを予防・治療薬として用いる可能性を強く支持する.また,Etiを間歇的に使用することにより,安全にNBPsを使用できる可能性も意味する.以上の意味で,今回の臨床成績は画期的な成績である
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