研究概要 |
癌症例の血漿中には,癌細胞由来のDNA断片が遊出し、これを抽出することにより癌細胞特異的なメチル化異常DNA断片が検出されることが報告され、新たな腫瘍マーカーないしは予後因子となる可能性が示唆されている。そこで、口腔癌患者から手術前と術後3ヶ月以降の血漿を採取し、癌抑制遺伝子であるp16,MGMT,RECK,CDH1,TIPM-3のプロモーター領域におけるhypermethylationの有無を検討した。また、手術標本の腫瘍組織における、同遺伝子のプロモーター領域におけるhypermethylationの有無も同時に検討を行った。 腫瘍組織における、hypermethylationはp16とRECKで90-95%確認できた。MGMTでは20%程度と少なく、CDH1,TIPM-3ではほぼ確認できなかった。この結果から、口腔癌患者血漿中の癌抑制遺伝子プロモーター領域のhypermethylationの検討では、p16とMGMTを検討することが適当であると推測された。 手術前血漿中のhypermethylationは、p16で約7割、MGMTで約1.5割確認できたが、RECK,CDH1,TIPM-3ではほぼ確認できなかった。この結果から、血漿中p16のメチル化異常に注目して、術後の継時的変化を追うことが適当であると推測された。 術前血漿でp16のhypermethylationを認めた14症例での術後3ヶ月以降の血漿では、無担癌症例11例でも担癌3症例(後発リンパ節転移を含む)でもhypermethylationが確認され、変化(メチル化異常の消失)が確認できなかった。そのため、hypermethylationの有無ではなく、hypermethylatonの程度(割合)を評価するべく、現在、再検索を行っている。
|