睡眠時ブラキシズムや病的な不随意運動の発現に関わる脳幹内の三叉神経系感覚ニューロン群の興奮機序について明らかにするために、生後2-12日齢ラットの脳幹スライス標本を用いて、三叉神経中脳路核ニューロンよりwhole-cell recordingを行った。昨年度中脳路核ニューロンへの分布が明らかとなった5-HT受容体についてh電流(Ih)の修飾作用を検討したところ、Ihの最大振幅値は抑制され、活動曲線は有意に右方移動を示し、抑制効果は生後発達的に増大することが明らかとなった。テール電流解析により、本抑制作用はGlutamateによるIhの修飾作用同様にゲート特性の変化によるものではなく、単一チャネルにおける電流密度の変化によるものであることが示唆された。さらに修飾作用発現に関わる細胞内情報伝達機構については、セカンドメッセンジャーのうちPKA-c AMPが有意に関与しており、PKCあるいは細胞内Caイオン濃度については殆ど影響を与えていないことが明らかとなった。さらに、5-HT受容体サブファミリーの作動薬、拮抗薬を用いた検索より、Ihの抑制作用は5-HT1受容体により特異的に発現している可能性が高いことが明らかとなった。中脳路核と運動核あるいは三叉神経上核からの同時記録については前年同様、交付予定額よりセットアップが困難であり、単一ニューロンの特性について予定している検索を継続しながら他のアプローチ方法について検討していく。一方、研究分担者らによる形態学的検討により、中脳路核ニューロンに分布する5-HT受容体、Substance P受容体の陽性終末は生後発達的に増加し、運動核同様に生後7日目付近でピークを形成する傾向が示唆された。今後対象とした神経伝達物質の作用について遊離脳幹標本を用いてさらに検討を行う予定である。
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