申請者らは、EFEMP2を低酸素下で発現誘導される新規遺伝子として、また、食道癌や大腸癌手術検体などで高発現している遺伝子として見出して来たので、本申請研究期間内に、1)低酸素誘導性の発現調節機構および、癌特異的発現調節機構の解明に取り組む。さらに、2)癌細胞における機能を分子レベルで明らかにする。3)分子標的治療対象としての妥当性を分子機能、細胞レベルで検討する事を目的に本申請研究を開始した。 1)EFEMP2低酸素誘導性の発現調節機構および、癌特異的発現調節機構の解明 EFEMP2遺伝子プロモーター融合luciferase reporter実験により、EFEMP2遺伝子発現が低酸素刺激による転写因子HIF-1を介した転写制御を受けていることを明らかにした。口腔がん細胞組織でも同様の制御を受けている可能性が考えられた。 2)EFEMP2の癌細胞における機能の解明 EFEMP2がp53に直接結合し、蛋白量の減少を引き起こすことによりその機能(標的遺伝子発現抑制など)を抑制することを見出した。さらに、EFEMP2は幹細胞維持や上皮間葉移行など細胞分化制御において重要な役割を果たしているNotchシグナルに影響を与える可能性を見いだした。変異体を用いた解析により、これらの分子機能に必要な蛋白領域が示唆された。 3)分子標的治療対象としての妥当性評価 EFEMP2の野生型および2種類の変異体の遺伝子安定導入細胞株を作製し、G418耐性コロニー形成能の違いが明らかとなった。また、食道がん組織の免疫染色により、一部のがん組織で強発現していることを見いだした。 以上本年度は、低酸素シグナルを受けたHIF-1により発現誘導されたEFEMP2が、p53の制御やNotchシグナルとのクロストークを介してがん細胞を制御していることを明らかにすることができた。
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