研究概要 |
1.マウス軟骨前駆細胞株ATDC5,マウス骨原性細胞株MC3T3の初期増殖期におけるコレステロールおよびその前駆物質(C27sterol)の影響 マウス骨原性細胞株MC3T3と軟骨前駆細胞株ATDC5は骨芽細胞や軟骨細胞への分化をin vitroで効率よく再現する培養系として知られている。しかしいずれも10%血清を添加した培養系であり,培養液中の脂質の影響を検討するためには可及的に血清を低濃度で用いることが必要となる。 (1)我々は種々の正常およびガン細胞株での無血清培養系を確立しており,この培養系にチャーコール処理し脂質を除去処理した牛胎児血清を低濃度(0.5%)添加した培地を使用し,ATDC5細胞の増殖および軟骨分化が誘導されることを明らかにした。さらに、同培養系においては、コレステロールおよびその前駆物質(C27sterol)のうち、コレステロール、ラトステロールは同細胞の増殖を促進すること、一方、同じC27sterolでも7-デヒドロコレステロールやデスモステロールは細胞増殖を抑制し、分化を促進することが明らかとなった。さらに、これら中間代謝産物の合成酵素群の遺伝子発現を定量PCR法で検討した結果、細胞増殖および分化に伴いこれら酵素の遺伝子発現が変動することも判明した。 (2)SGnic hedgehog(SHH)およびその受容体であるpatched(PTCH)は発生期の左右軸決定やneural crestの発生に重要な働きをしている。我々は基底細胞母斑症候群:NBCCS患者の末梢血および顎嚢胞由来DNAを用いてPTCH遺伝子のexon2-exon23における変異を検討した結果,顎嚢胞患者ではexon8の1162番目のアデニンのチミンへの変異を認め,同変異は338番目のコドン,アスパラギン酸のチロシンへの置換を示唆した. (3)下顎正中裂症例の遺伝子診断:下顎正中裂患者由来末梢血よりDNAを抽出し,SHH遺伝子の変異をPCR-SSCPおよびダイレクトシークエンスを行った結果、エクソン1領域に279番目の塩基CのTへの変異が明らかとなった。 この変異は,コドン43番目のアラニンのバリンへの置換を示唆した。
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