スンクスの胎生19.5日齢以降の胎児サンプリングを行い、パラフィン切片を作製し、抗体染色法を用いてタンパクの発現解析を行った。胎生19.5日齢は上顎突起の伸張過程であるが、上皮マーカーであるサイトケラチン抗体(AE1/AE3)を用いた染色では口蓋突起先端部の上皮はサイトケラチンの発現は見られなかった。また細胞増殖のマーカーであるKi67抗体を用いた染色でも、同部の上皮での細胞増殖は見られなかった。この発現パターンはげっ歯類であるマウスでも同様のパターンを示す。このことは、口蓋突起の伸張過程の分化・増殖パターンはマウスースンクスの動物種間にて大きな違いはない事が示唆された。また、胎生20.5日齢は口蓋突起が接合し、上皮接合部の消失が見られる時期である。この時期でのAE1/AE3の発現は、接合部上皮でのみ認められ、同部でのKi67の発現は見られなかった。またTUNEL法を用いたアポトーシス細胞の検索を行ったが、接合部上皮でのみ発現が見られた。このことは口蓋突起の融合は少なくとも上皮細胞のアポトーシスが関与していることが示され、この過程においても動物種を越え同様の形態形成メカニズムがあることが示唆された。さらに胎生23.5日齢における口蓋骨伸張先端部間葉細胞においてアポトーシス細胞が確認された。また骨増殖マーカーであるALPの発現が伸張過程の口蓋骨先端に強く発現していることが確認され、TGFβRIIタンパクも口蓋骨伸張部先端に発現していることが認められた。この骨の形成はヒトやスンクスで特徴的なものであり、このタンパク機能は現時点では明らかではないが、TGFβタンパクがヒトやスンクスにおいて種特異的に口蓋骨の伸張や形成に関わっている可能性が示唆された。
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