本研究の平成22年度の研究計画に従い、口腔扁平苔癬患者から口腔粘膜組織、唾液、血清を各々8検体を収集した。これらの検体を硝酸灰化法にて液化処理してPIXE法にて元素分析を行った。今年度も病変を中心とした組織のデータの集積を行う予定である。 平成21年度同様に、亜鉛、スズ、パラジウムなど微量・超微量元素を含む25種の必須元素と、アルミニウム、チタン、ストロンチウム、銀、金、水銀、鉛など14種の非必須元素(汚染元素)を検出し、含有量を測定している。汚染元素は本来生体に不要な元素で、その存在と疾患との関係が注目される。実際に、今年度はリチウム製剤を内服中の患者の薬剤性と思われる口腔扁平苔癬の粘膜中の元素分析を行い、その成果を報告した。 これまで粘膜全層で元素分析を行ってきたが、タンパク分解酵素を用いて粘膜を上皮層と粘膜固有層の組織の分離を行うことで、より明確な元素の粘膜組織中の局在性をみることができる。これは組織上の元素の局在性をより明確に観察するマイクロPIXE分析法の基礎資料にもなる。さらに各種元素の局在性と血液、唾液の元素分析結果を比較検討することで、金属元素の生体における吸収や排泄時の口腔粘膜の役割が解明され、疾患との関連が裏付けられると思われる。現在、このための基礎データの蓄積を行っている。また、今後の研究展開のために、口腔悪性・良性腫瘍などの病変組織の微量元素分析も行っている。 これまでの研究成果の一部を札幌で行われた第64回日本口腔科学会総会において発表した。
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