研究概要 |
昨年度までの研究にて尋常性天庖瘡(PV)患者血清中のPV自己抗体の病原性解析を詳細に行った。本年度は更なるPV自己抗体の病原性解析を行う目的で、PVモノクローナルIgG抗体(AK IgG mAb)を用いてPV自己抗体のクラスの違いにおける病原性解析を行った。以前に我々は非病原性のAK7 IgG mAbの超可変部位を有するAK7 B細胞トランスジェニックマウス(B-Tg)を作製し、自己反応性IgM抗体を産生するB細胞は抹消リンパ組織中に排除されることなく存在していることを明らかにした。そこで本研究期間中に強い病原性を有するAK23 IgG mAbの超可変部位を有するAK23 B-Tgを作製した。AK23 B-Tgでは病原性を有する超可変部位を有するにもかかわらず、AK7 B-Tgと同様に自己反応性B細胞が抹消リンパ組織中に排除されることなく存在し、さらには分泌された抗Dsg3 IgM抗体の上皮細胞間への沈着を認めるものの、明らかなPVの表現型は誘導されなかった。そこでAK23 B-Tgより病原性超可変部位を有するPVモノクローナルIgM抗体(AK23 IgM)を単離した。in vitro dissociation assayによる病原性解析では、AK23 IgMは明らかな病原性を示さなかった。さらにAK23 IgMハイブリドーマを接種し腹水化したマウスの口蓋粘膜の免疫電顕を実施しIn vivoにおけるAK23 IgMの病原性を観察した。その結果AK23 IgMはデスモゾーム内に沈着することなく、優位にデスモゾーム周囲に沈着している像が観察された。これはAK23 IgMは膜上のDsg3には結合するものの、デスモゾームに組み込まれたDsg3には結合していないためであると考えられた。そこでAK23 IgMをペプシンで消化しF(ab')2化したところ、in vitro dissociation assayにて病原性が確認された。 以上の事実よりPVでの水庖形成においては、免疫グロブリンが病原性を発揮するためにはデスモゾームに組み込まれたDsg3蛋白にIgGクラスの抗体が結合する事が、一つの重要な因子であることが確認され、発症機序の一端が明らかにされた(Tsunoda et al.American journal of pathology,in revision)。
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