研究概要 |
近年、口腔外科領域でも骨組織再生の臨床応用が求められている。組織再生には細胞、増殖因子、スキャホールドの検討が必要である。本研究では、患者への侵襲が少なく、安全で豊富に入手できる幹細胞の細胞源の検討を目的として、埋伏智歯の歯嚢から細胞を分離・培養し、骨芽細胞への分化能を検討した。<方法>インフォームド・コンセントが得られた患者から採取した歯嚢をcollagenase/dispase処理し、ヒト歯嚢由来細胞(歯嚢細胞)を分離した。歯嚢細胞を骨芽細胞誘導培地で培養後、アリザリンレッドS染色を行った。alkaline phosphatase(ALP)活性を測定した。次に、歯嚢細胞を増殖培地または骨芽細胞誘導培地で培養後、total RNAを抽出し、マイクロアレイ解析を行った。Real-time PCR法を用いて遺伝子発現の確認を行った。<結果および考察>歯嚢細胞骨芽細胞誘導培地で培養を行うと培養15日頃からアリザリンレッド染色陽性となり、ALP活性も上昇した。マイクロアレイ解析の結果、骨芽細胞誘導培地で培養した歯嚢細胞ではosteomodulin,IGF-II,IGFBP-2遺伝子が上昇することが認められた。osteomodulin IGF-II,IGFBP-2遺伝子の発現上昇はreal-time PCR法でも確認された。Osteomodulinは骨形成に必要な細胞外基質形成やミネラル沈着に関与するとされている。IGF-II/IGFBP-2複合体は骨芽細胞の増殖因子として注目されている。歯嚢細胞は骨芽細胞誘導培地で培養を行うと、石灰化すること、骨芽細胞増殖・分化に関与するといわれているosteomodulin,IGF-II,IGFBP-2遺伝子が上昇することから、骨組織再生療法の細胞源となりうる可能性が示唆された。
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