研究概要 |
近年,骨再生医療が現実のものとなりつつある。そこで,生体侵襲が少なく、安全で豊富に入手できる細胞源の検討が必要となってきた。歯嚢は埋伏歯を覆っている結合組織で、埋伏歯抜歯の際に抜去歯とともに破棄される組織である。歯嚢から分離した細胞を骨芽細胞誘導培地で培養を行うと石灰化することが明らかとなっている。本研究では、歯嚢由来細胞(DFC)の骨再生医療の細胞源としての可能性を検討することを目的として、DFCと骨髄由来未分化間葉系幹細胞(MSC)の遺伝子発現について比較検討した。【方法」日本大学松戸歯学部倫理委員会の指針に従い、埋伏抜歯時に採取した歯嚢をcollagenase/dispase処理しDFCを分離した。MSCはLonza社から購入した。DFCおよびMSCを未分化間葉系幹細胞増殖培地(GM)または骨芽細胞分化誘導培地(OIM)で培養を行い、alizarin red S染色、alkaline phosphatase(ALP)活性を測定した。遺伝子発現量はGene Chip HG U133 plus 2.0 arrayを用いて測定した。【結果および考察】DFCはOIMで培養を行うと石灰化し、alkaline phosphatase活性が上昇した。Microarray解析を行った結果、DFCはCD29,CD44,CD73,CD90が高発現しており、CD13,CD49a,CD49b,CD49c,CD49d,CD49e,CD49f,CD105,CD106は発現が認められた。一方、CD31,CD34,CD45,CD62,HLA-DR、HLA-DQ、HLA-DPの発現は認められなかった.このDFCの細胞表層抗原の発現パターンはMSCと類似しており、再生医療の細胞源としての可能性が示唆された。
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