研究概要 |
歯嚢は、歯科治療過程で破棄される組織であり、骨芽細胞へと分化する細胞が存在すると考えられている。本研究では、歯嚢由来細胞(DFC)の骨再生医療の細胞源としての可能性を検討することを目的として、DFCと骨髄由来未分化間葉系幹細胞(MSC)について遺伝子発現解析した。【方法】日本大学松戸歯学部倫理に関する指針に従い、埋伏抜歯時に採取した歯嚢をcollagenase/dispase処理しDFCを分離した。MSCはLonza社から購入した。DFCおよびMSCを増殖培地(GM)または骨芽細胞分化誘導培地(OIM)で培養を行い、alizarin red S染色、alkaline phosphatase(ALP)活性を測定した。遺伝子発現量はGeneChip HG U133 plus 2.0 arrayを用いて測定し、Ingenuity Pathway Analysis(IPA)を行った。【結果および考察】DFCはSTRO-1陽性細胞が存在し、OIMで培養を行うと石灰化し、ALP活性が上昇した。GMで培養3日目のDFCとMSC間で遺伝子発現解析を行った結果、DFCの細胞表層抗原および細胞マーカーの発現パターンはMSCと類似していた。DFCをGMまたはOIMで培養し、3日および10日目の細胞について遺伝子発現解析を行ったところ,GMに比べOIMで培養した細胞で2倍以上発現変動した遺伝子は3日目で951遺伝子,10日目で1798遺伝子であった。これらの遺伝子群をGene ontology分類するとTranscriptionに分類される遺伝子が多かった。次に発現変動した遺伝子群のIPAを行ったところ、培養3日目ではOIMで培養した細胞ではBMPおよびTGF-βシグナリングパスウェイが活性化していることが示唆された。以上の結果から、DFCは再生医療の細胞源としての可能性が示唆された。
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