研究概要 |
唾液の感染防御に果たす役割は大きく、唾液分泌低下は口腔カンジダ症のリスクファクターとなっている。唾液ムチンには高分子MUC5Bと低分子MUC7があり、MUC7は細菌凝集活性を有し、抗真菌効果も報告されている。本年度は、唾液分泌機能低下とMUC7分泌能との関連性、ならびにMUC7低下とカンジダ増加の関連性について検討した。 材料および方法は、鶴見大学歯学部付属病院ドライマウス外来受診者を対象として、唾液量、唾液中MUC7量を測定した。安静時唾液分泌量測定は、吐唾法で15分間測定し、1.5mL/min以下を唾液分泌低下とした。MUC7の測定は、唾液を10,000gで4分間遠心した上清をELISA(Human Mucin-7 ELISA kit, Cusabio Biotech,)で測定した。 結果として、唾液分泌低下例のMUC7濃度と、唾液分泌量が低下していない例のMUC7濃度に有意な差は見られなかった。このMUC7濃度を15分間に分泌された総ムチン量に換算すると、唾液分泌低下例のMUC7量より、唾液分泌量が低下していない例のMUC7量の方が多く、唾液分泌量に相関して、総MUC7量が多くなるという相関が見られた。 唾液分泌低下がない群において、カンジダ陽性群はカンジダ陰性群よりもMUC7濃度が低く、カンジダの口腔内定着阻止にMUC7が関与していることが示唆された。 唾液分泌低下している群において、カンジダ陽性群とカンジダ陰性群とでMUC7濃度、MUC7量ともに差がなかった。一方、MUC7以外の唾液タンパクは、唾液分泌低下していてカンジダ陰性群が多かった。これらのことから、MUC7以外の唾液タンパクによる抗真菌作用が存在すると推察された。
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