研究概要 |
核内転写因子である用PAX遺伝子は、9つのFamilyからなり、発生初期における細胞分化への関与が報告されている。また本遺伝子はヒト成人細胞において、抗腫瘍遺伝子であるp53の遺伝子発現を調節すること、変異タンパクが肺扁平上皮癌を初めとする複数のヒト癌組織で認められていることから発癌への関与が示唆されている。この転写因子であるPAX familyを解析することにより癌の情報伝達系が明らかになり、より詳細な発癌機構が解明され、癌の診断、治療法、遺伝子治療に役立つものと思われる。このため、本研究では、口腔癌におけるPAX遺伝子群の発現状態を明らかにし、その役割を考察することを目的とする。 既に保有しているヒト全遺伝子搭載マイクロアレイ(Affymetrix社)データ・ベースと多標識2次元電気泳動法と質量解析法による口腔悪性腫瘍プロテオーム・マップをもとに、PAX遺伝子群の各遺伝子動態を抽出解析したところ、培養口腔扁平上皮癌においては、9つあるPax遺伝子群のうち、特に、Pax5が高発現を示すことが判明した。そこで、口腔癌細胞株5種類(HSC-2, HSC-3, HSC-4, Ca9-22, Sa3)における発現状態をReal-time PCRにより調べたところ、全ての癌細胞株でPax5が高発現を示した。そこで、50例の臨床サンプルでmRNA発現をreal time PCR法で、さらに、タンパク発現を免疫染色法で調べたところ、78%の症例でPax5遺伝子の発現が亢進していることが明らかになった。 今後、他のPax遺伝子に関しても発現状態の詳細を検討していく予定である。
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