[目的]私たちはウシ胎仔血清やマウス細胞との共培養をしない培養システムを用いて、ヒト無細胞真皮と口腔粘膜上皮細胞より培養複合口腔粘膜(EVPOME)を開発し、2000年より臨床応用を開始し現在までに100例以上を経験するとともに、基礎的研究として動物モデルや臨床例よりEVPOMEによる口腔粘膜再生過程について検討してきたが、移植後認められる上皮はどこから来たのかが未だ不明である。そのため、マウス口腔内移植モデルを用いて、EVPOME移植後の治癒過程について形態学的に検索するために、今回はまず移植前のEVPOMEの性状を評価した。 [方法]ヒト口腔粘膜上皮細胞を培養ヒト無細胞真皮(AlloDerm[○!R])上に播種、重層化させ、EVPOMEを作製し、ホルマリン固定、パラフィン連続切片を作製して組織学的に観察した。上皮細胞マーカーであるサイトケラチン17、細胞増殖マーカーであるKi-67に対する抗体を用いてEVPOMEの上皮細胞の増殖能や分化能を免疫組織化学的に観察するとともに、上皮細胞のグルコース代謝能を示すGLUT-1を免疫組織化学的に検索した。また、EVPOMEの培養上清よりグルコース消費量を測定した。 [結果]EVPOMEの上皮細胞はサイトケラチン17陽性、Ki-67陽性細胞は基底層に多い傾向にあり、GLUT-1は上皮全層で陽性であった。グルコース消費に関しては、消費率が高い時期には組織学的に増殖細胞が多く、グルコース消費率が減少する場合には増殖細胞が減少する傾向にあった。 [考察]以上より、EVPOMEの上皮は重層化しているが増殖能にすぐれ、その増殖活性はグルコース消費量で評価できることが示唆された。今後はEVPOMEをマウス口腔内に移植し、移植後の変化を移植前の性状に関連させて検討する予定である。
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