[目的]私たちはウシ胎仔血清やマウス細胞との共培養をしない培養システムを用いて、ヒト無細胞真皮と口腔粘膜上皮細胞より培養粘膜(EVPOME)を開発し、2000年より臨床応用を開始し現在までに100例以上を経験するとともに、基礎的研究として動物モデルや臨床例よりEVPOMEによる口腔粘膜再生過程について検討してきたが、移植後認められる上皮はEVPOMEの培養上皮であるのか、再生上皮であるのかがいまだ不明である。そこでマウス口腔内移植モデルを用いて、EVPOME移植後の治癒過程について形態学的、免疫組織化学的に検索した。 [方法]ヒト口腔粘膜上皮細胞を培養ヒト無細胞真皮(AlloDerm[○!R])上に播種、重層化させ、EVPOMEを作製し、ヌードマウス頬粘膜欠損創に移植し、経時的に屠殺し、標本を作製した。EVPOMEおよび移植片はホルマリン固定、パラフィン連続切片を作製して組織学的に観察し、さらに上皮細胞マーカーであるヒトサイトケラチン17、基底膜マーカーであるヒトタイプIVコラーゲンを免疫組織化学的に検索した。[結果]EVPOMEの上皮細胞はサイトケラチン17陽性であり上皮細胞と無細胞真皮の間にはタイプIVコラーゲン陽性の基底膜が認められた。しかしながらEVPOME移植後7日目では、サイトケラチン17陽性細胞は剥離、脱落し、それに隣接してサイトケラチン17陰性上皮細胞が認められた。無細胞真皮上のヒトタイプIVコラーゲンは認めらなかった。そして14日目にはサイトケラチン17陰性の厚い上皮細胞が移植部を被覆し、ヒトタイプIVコラーゲン陽性反応はやはり認められなかった。[考察]以上より、EVPOMEの上皮と基底膜は移植後7日で脱落し、速やかに周囲から再生上皮が基底膜を伴って被覆することが示唆された。
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