研究課題
胎生17日頃から胎仔の顎運動が観察でき(Narayanan et al 1971)、遊離脳幹標本からは神経生理学的にリズミカルな三叉神経活動が得られたこと(Ishihama et al 2003)から、この時期より以前から顎運動に関わる神経回路網が形成されていると考え、NMDA受容体、non-NMDA受容体拮抗薬を母獣ラットに投与し、新生仔ラットの生後発達について行動学的に調査した。NMDA受容体拮抗薬としてMK-801、non-NMDA受容体拮抗薬としてCNQXを妊娠14日目の母獣ラットに腹腔内注射で投与した。投与量、投与回数はそれぞれ0.5mg/kg、0.2mg/kgとし、12時間間隔で投与した。また、母獣ラットの体重増加も記録し、捕食状況と併せて各拮抗薬投与の継続を判断した。体重増加がみられない場合は拮抗薬の投与を中止した。行動学的評価項目は経時的体重変化、生後3週齢における捕食時間、生後6週齢における空間認知能力(モリスの水迷路)について調査した。24時間絶食後の30分間の捕食はコントロール群2.3gに対しMK-801投与群は1.0g、CNQX投与群は0.9gであった。また、空間認知能力はコントロール群に対し、MK-801投与群もCNQX投与群も劣る結果が得られた。胎仔の灌流固定が行えるようになり、胎生期の三叉神経運動核におけるシナプス関連タンパクは胎生16日から発現していたことが免疫組織学的調査でわかった。NMDA受容体のアンカープロテインであるPSD-95、AMPA受容体のアンカープロテインであるGRIP1、シナプス形成でみられるSAP97、SAP102について調査を行っている。それぞれの発現率を評価するため、ヘマトキシリン染色による対比染色でそれぞれのシナプス関連タンパクの陽性率を算出している(現在のところn数がまだ少ない)。