研究課題
口腔に発現する粘膜疾患は多種多様なものが見られるが、臨床上問題となる疾患は扁平苔癬や白板症などある程度限られたものとなる。これらの鑑別を行うことは経験を積んだ口腔外科医(専門医)にとってはそれほど困難なものではないが、粘膜疾患を恒常的に診査診断していない一般臨床歯科医にとっては必ずしも容易なものとは言えない。近年のデジタルカメラの進歩、普及は目覚しく、口腔内用のデジタルカメラを日常の歯科臨床に活用している歯科診療所も多くなっている。粘膜疾患の診断は視診が重要なウェイトを占めるため、撮影された画像でも専門医はある程度の判断を下すことができる。この判断を、コンピューターを利用して支援できれば、前述の一般臨床歯科医の悩みの解決につながると考えられる。粘膜疾患は定型的なものであっても病態にばらつきがあるが、人間はそのばらつきを含め全体としての確からしさで判断している。しかし、このような判断は従来のコンピューターには不得手な処理である。われわれは曖昧さを数学的に取り扱うソフトコンピューティングを用い、専門医が行うような診断をコンピューターの支援のもとに行うシステムを九州工業大学大学院生命体工学研究科脳情報専攻脳型情報処理機械講座脳型計算機研究室(山川烈教授)と共同研究している。今回は、診断を行う前段階の一つとして、人間が無意識に行っている、粘膜疾患を診断するための特徴を、デジタル画像からコンピューターに自動認識させる方法を検討した。方法:扁平苔癬のデジタル画像から専門医がレース状の白斑と判断した部位を手動で抽出した。一方で岡一画像から白斑部分を遺伝的アルゴリズムを基に考案した進化的画像処理法でコンピューターを用い抽出させ、両者を比較した。結果:両者の間には比較的高い一致が見られた。結論:画像から粘膜疾患の特徴を自動抽出できる可能性が示唆された。
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Int J Oral Maxillofac Surg 38
ページ: 377-381