嗅上皮に存在する嗅神経被膜細胞(OEC ; olfactory ensheathing cells)が有する自己複製能と増殖能が、末梢神経のSchwann細胞や軸索の成長因子や栄養因子として機能するか検索することを目的として研究している。過去の文献では、OEC移植が脊髄損傷の修復に有用であることが確認されている。そこで本研究では末梢神経損傷の修復に有効であるかを検索するため、ラット下歯槽神経損傷部への同種新鮮OEC移植後のSchwann細胞の再生・分化・誘導様相および軸索再生を観察している。wistar系ラットを用い下歯槽神経切断損傷モデル(奥羽大学歯学誌33:195-206 2006.)に準じ、オトガイ神経をオトガイ孔から露出した部分で切断し、さらにオトガイ孔に小穿孔を加え完全な神経損傷モデルとした。移植するOECの採取は同種wistar系ラットの頭蓋骨側方から嗅球前方下部の鼻腔側壁を開窓し、鼻腔上壁に存在する嗅上皮をマイクロ手術用顕微鏡下に鼻腔粘膜とともに摘出した。採取した嗅上皮を神経損傷モデルのオトガイ孔部に移植し経過観察を行っている。移植した嗅上皮と移植された下歯槽神経の経過について、形態的観察を行った結果、移植した嗅上皮は単純に線維化あるいは肉芽組織化せず、経時的にSchwann細胞の侵入を示唆する所見が観察された。また、免疫染色では変性あるいは壊死する神経線維のほかに再生神経線維に陽性を示す所見が観察されている。
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