研究概要 |
本研究の最終目的はモデル動物唾液腺を用いてシェーグレン症候群の耳下腺および唾液中における特徴的なタンパク質の発現を解明することである。この目的のために,今年度は1)マウスから全唾液を採取し,cDNAマイクロアレイの結果から選択した遺伝子について,唾液中におけるタンパク質の検出を試みた。また,免疫組織染色を行い,発病による変化を調べた。さらに,2)Aquaporin8の局在性および糖尿病NODマウスで発現が減少する原因を探った。 1)cDNAアレイからChia(chitinase)およびCstl0(cystatin10)を選んだ。糖尿病NODからは唾液採取が不可能であったので,体重測定により発病が予想されるNODマウスと健康なNODマウスから唾液を採取して比較した。Western blottingにより,chitinaseおよびcystatin10は非糖尿病NODおよびコントロールマウス(C57BL/6)から得られた唾液にいずれも含まれており,NODの方がコントロールよりも多かった。発病が予想されるNODと健康なNODからの唾液の比較では,cystatin10にはほとんど差がみられなかったが,chitinaseは発病が予想されるNODの方が多く含まれていた。免疫染色からも,chitinaseは糖尿病NODおよび発病予想NODでより強く染色された。すなわち,耳下腺および唾液中において,chitinaseは糖尿病NODマウスで発現が増加することが分かった。 2)Aquaporin8のタンパク質発現の変化を調べた。Aquaporin8は耳下腺腺房細胞を取り巻く筋上皮な細胞に存在しており,糖尿病発病NODマウスでは筋上皮細胞が衰退していること,それに伴いaquaporin8が減少することがわかった。発病NODマウスにおける唾液分泌機能低下の一因であると考えられる。
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