研究概要 |
【目的】慢性中等度エタノール(EtOH)摂取は虚血preconditioning(PC)様の虚血心筋保護効果を慢性的に誘発することがわかっている(EPC)。この効果は摂取中止後,少なくとも7日間持続,14日以内に消失し,その持続にeNOSの虚血前のupregulationが関係することがわかっている。その関与を明らかにするためNOS阻害薬であるL-NAMEを再灌流後に持続投与し,プレコンディショニング効果が消失するか否か検討した。また、再灌流後Nitric Oxide(NO)を測定し保護効果への関与を検討した。 【方法】モルモット灌流心でコントロール(CTL)として30分間虚血-120分間再灌流(I-R)を行なった。EPCは飲料水として5%EtOHを8週間摂取させて誘発した(E)。Eではその後CTLと同様のI-Rを行なった.EとCTLの両群に再灌流後,120分間のL-NAME100μMを持続投与した(EN,CN).左心室圧(LVDP),左室拡張終期圧(LVEDP),冠灌灌量(CF)および心筋梗塞サイズ(IS)を各群で比較した。NOはフリーラジカルアナライザーで測定した。 【結果】I-R後,LVDPはCTLと比較してEで有意に高く,EN,CNの両群で有意差はなかった。LVEDPはCTLと比較してEで有意に低く,EN,CNの両群で有意差はなかった。CFは各群間において有意差はなかった。ISはCTL(46.6%)に比較してE(25.9%)と有意に縮小した。この効果は再灌流後L-NAMEの持続投与にて消失した(EN:42.3%, n.s vs CTL)。NOは現在測定中である。 【結論】慢性エタノール摂取によるプレコンディショニング効果にはeNOSのupregulationnによる再灌流後のNOS活性の増強が関与することが示された。この効果によりNOの産生が増強していることが考えられるが現在検討中である。
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