研究概要 |
【目的】慢性中等度エタノール(EtOH)摂取は虚血preconditioning(IPC)様の虚血心筋保護効果を慢性的に誘発することがわかっている(EPC)。この効果は摂取中止後,少なくとも7日間持続,14日以内に消失し,その持続にeNOSの虚血前のupregulationが関係することがわかっている。我々は全身麻酔に用いられる揮発性麻酔薬であるsevofluraneがこの効果を増強することを報告した。さらに昨年、Sevofluraneはglycogen synthase kinase 3β (GSK3β)のリン酸化の発現増強により5%EtOH慢性摂取による心保護作用を増強することを報告した.GSK3βのリン酸化はmitochondrial permiability transition pores (mPTP)の開口を抑制することが報告されている。今年度はsevofluraneが慢性中等度エタノール摂取によるEPCを増強する効果におけるGSK3βのリン酸化増強が実際にmPTPの開口抑制を引き起こすか否かをcalceinを用いてミトコンドリアへのCa2+負荷により検討した。 【方法】モルモットLangendorff灌流心で30分間虚血後120分間再灌流(I/R)を行った群を対照群(CTL)とした.I/R前に5%EtOHを8週間摂取させた群(E),Sevo(1MAC:2%)を虚血前10分間投与後,10分間washoutした群(S),EにSと同様のSevoを投与した群(E+S)の4群を作製した.各群で左心室圧(LVDP),冠灌流量(CF),梗塞サイズ(IS)を測定し比較検討した.また,虚血直前に左室心筋を採取し,ミトコンドリアを分離しcalceinを投与後、Ca2+(50~150uM)を負荷し、calceinの減少度によりmPTPの開口を検討した 【結果】I/R後のLVDPはCTLと比較しE,S,E+Sで有意に高かった.ISはCTLと比較しE,Sで有意に小さく,E,Sに比べE+Sでさらに縮小した.CFは各群間で有意な差はなかった.calceinの減少度はCTLと比較しE,Sで有意に低く,E,Sに比べE+Sでさらに低かった 【考察】SevofluraneはGSK3βのリン酸を増強することにより、mPTP開口を強く抑制しEPC効果を増強することが判明した
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