フッ素徐放性レジンの硬化体が歯質とのギャップにおいて数十μmの結晶性物質を形成することをラマン分析およびSEM観察により確認した。さらに接着性レジンの再石灰化能を向上させることを目的としてバイオグラス(Na_2-CaO-SiO_2-P_2O_5系)添加型レジンを作成、わずか、数ヶ月の水中浸漬により多量の石灰化物を形成する事実を確認している。 しかし、これら再石灰化能の発現には、レジンに配合するバイオガラスの濃度およびレジンモノマーの組成が重要となることが明らかとなった。Bis-GMA/TEGDMAを種々の重量%で配合したポリマー素材においては再石灰化物の生成は観察されない場合が多い。しかし、Bis-GMA/TEGDMA/HEMAレジンを作製、ポリマー素材を親水性にした場合、ポリマー素材そのものの水分吸収により石灰化能を発現する。よって、レジンモノマーの配合を調節することにより内在するバイオガラスの活性を調整することが明らかとなった。本実験は主にマイクロスケールのバイオガラスにより得られた結果であるが、今後、粒子径が小さなグラス(ナノバイオグラスなど)を使用することにより、レジンやセメントに混入する添加量を減少させた状態における石灰化誘導能について研究を行う予定である。
|