本研究は、ヒト歯髄血流量と歯髄酸素飽和度を同時に測定することで、歯根の形成度および吸収度をエックス線被爆させることなく無痛的かっ客観的に診断する新しい方法を確立することを目的としている。 本年度は1)抜去歯および定量送液ポンプを用いたヒト歯髄血流モデルの作成と、これを対象とした血流および酸素飽和度の測定および2)臨床測定を計画した。1)に関しては、現在、歯髄と同様な動きを示すと予想される頭頸部皮膚およびコントロールとして手掌の皮膚の血流および酸素飽和度を同時に測定し、測定システムを構築中である。歯髄での測定を行うためには、まだ改良の余地があると思われた。また、2)に関しては、研究代表者は以前、幼若永久歯歯髄血流の経年変化を明らかにした。しかし幼若永久歯歯髄血流と歯根形成度との関係を明らかにしていなかった。本年は、エックス線写真で歯根形成度を確認してから歯髄血流を測定した。その結果として、幼若永久歯の平均歯髄血流は歯根が形成されるにつれて、減少傾向が見られた。しかしヒト幼若永久歯における歯髄血流と歯根形成に関して、相関は認められなかった(スピアマン順位相関係数p=0.141>0.05)。歯髄血流測定は幼若永久歯の歯根形成の評価の一助として応用できると思われた。更に酸素飽和度を測定することにより、エックス線写真撮影することなく、より正確に歯根の形成や吸収を評価することができると予想された。なお、2)に関して得られた結果の要旨は、第3回インターフェース口腔健康科学国際シンポジウム(仙台)にて発表した。
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