本研究は、ヒト乳歯および幼若永久歯歯髄を測定対象とし、その血流量と酸素飽和度という2つの血行動態パラメーターを同時に測定することで、歯根の形成度および吸収度をエックス線被爆させることなく無痛的かつ客観的に診断する新しい方法を確立することを目的とする。パルスオキシメーターを用いて様々な状態にあるヒト歯髄を対象として測定を行い、レーザードップラー血流計との相関性を明らかにする。さらに乳歯歯髄血流と血中酸素飽和度との経年変化も明らかにすることを目的としている。 本年度は1)抜去歯および定量送液ポンプを用いたヒト歯髄血流モデルの作成と、これを対象とした血流および酸素飽和度の測定および2)臨床測定を計画した。1)に関しては、Kashimaの方法に基づいて、歯髄と同様な動きを示すと予想されるヒトの下唇およびコントロールとして指の先端における酸化ヘモグロビン量、還元ヘモグロビン量、トータルヘモグロビン量、酸素飽和度レベルについて、組織血酸素モニターを使って測定した。組織の血流量をレーザードップラー血流計により同時にモニターした。口唇の酸素飽和度は81%から88%、指先は77%から83%であった。本研究で使用した装置は組織の酸素飽和度レベルを反映していると示唆された。結果の要旨は、第4回インターフェース口腔健康科学国際シンポジウム(仙台)にて発表した。歯髄での酸素飽和度測定を行うためには、まだ測定システムに改良の余地があると思われた。そのため、2)に関しては、まだ、歯髄の酸素飽和度測定ができておらず、歯髄血流との相関性が不明なままである。測定プローブの改良・開発が必要と思われる。また現在、技術的に可能な範囲内で、口唇と指における測定条件の差、あるいは加齢による差があるか比較するなども必要と思われる。
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