骨延長法は顎顔面領域の著しい形態異常に対する新しい治療法として近年多用されている。しかしながら、延長時にどの程度の力が作用しているかの検討は極めて少ない。本研究では、頭部に延長器を固定する創外型上顎骨延長装置であるREDシステムに超小型張力センサを組み込み牽引ワイヤーの張力を計測することにより、上顎を前方に牽引する際に作用する牽引力の大きさを測定した。市販の張力センサ(SSK社製、LT6-5)の長径を市販の40mmから可及的に縮小するよう設計し、23mmにまで小型化した。さらに口腔に近接して使用のための耐水性および接続コードの補強を行い臨床適用した。 今回の検討に用いた口唇・口蓋裂患者7症例(男性3名、女性4名)の年齢は21.4±5.4歳(平均、SD)で、裂型の内訳は片側性口唇口蓋裂5名、両側性口唇口蓋裂1名、口蓋裂1名であった。これらの症例を用い、朝夕の装置アクチベート時に張力センサをインターフェイスに接続し、パーソナルコンピュータにて出力表示および記録することにより、張力を経日的に測定した。今回の7症例のアクチベートの最長日数は21日で、アクチベート量が最も多かった症例は26mmであった。計測の結果、張力は経日的に増加し、両者に正の相関を認めた(p<0.05)。また、最も大きな張力を示した症例では、延長終了時に54N(ニュートン)であった。今回、臨床例において経日的な張力測定が可能であり、牽引中にどのような力が作用しているかを確認するに至った。
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