研究課題
近年、矯正治療を希望される成人の患者が増えており、矯正力に対する応答が子供とは異なることが臨床的に認められている。しかし、老化による歯周組織の退行性変化の詳細な検討はいまだ不十分である。口腔内においては咬合力などのmechanical stressが、骨を含めた歯周組織の恒常性の維持に関与している。歯科矯正分野では歯に矯正力を付与することによりその歯根周囲の歯根膜に圧迫側、牽引側が生じ、骨芽細胞、破骨細胞による歯槽骨の骨形成、骨吸収という骨の新鮮化を伴いながら歯の移動を起こしている。そこで、矯正の分野で重要な骨の代謝のメカニズムにおける老化の影響を明らかにすることを目的に、6、12、18ヶ月の加齢ラットを用い細胞の増殖や、分裂、アポトーシスを調節し、歯周組織のremodelingに影響を与える線維芽細胞増殖因子(bFGF)にどのような変化が起こるか組織学的に検討し成果を上げた。bFGFは、歯根膜において、破骨細胞の活動を増強し、I型コラーゲンの産生を減少させ、アルカリフォスファターゼ活性を抑制する。遠心根近心側中央部歯根膜におけるbFGFの産生は加齢に伴い、低下し、根尖部においては変化が無く、歯根の部位によりその発現パターンが異なることを明らかにした。加齢によるbFGFの産生の低下は、歯根膜の再生を遅延させことに関連していることが示唆され、高齢者における矯正治療に影響を与えることが考えられた。
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The Angle Orthodontist Vol.80, Issue 2
ページ: 309-315