顎顔面領域の恒常性の維持、再生の機序の解明は、歯科矯正学のみならず歯科における最重要課題のひとつであり、これには、血管が大きな役割を果たしている。血管の再構築、いわば血管新生は血管新生促進因子と新生抑制因子により厳密に制御され、両者のバランスが崩れたとき、生体にさまざまな病態を誘発する。そこで、本研究課題の研究代表者は、歯髄組織において血管網の変化と咬合喪失との関わり(Shibutani et al)、歯根膜におけるについて血管新生因子であるVEGFの発現パターン(Usumi et al)について組織学的に明らかにした。歯根膜血管は加齢の影響を受けることから、歯周組織の病的現象の誘発に関わるとされる。そこで、加齢変化が歯周組織の血管に与える影響を示唆するべく、血管新生因子であるとともに歯根膜細胞の増殖因子であるbFGF(塩基性線維芽細胞増殖因子)を標識にして組織学的研究を行い報告した(酒向ら、The Angle OrthodontistsにてIn press(Sako et al))。 また、不正咬合が顎関節組織の構造へ与える機序について明らかにするべく、臨床及び基礎研究の両面から検討を行った。臨床研究においては、不正咬合者の顎関節CT画像を用いて顎関節窩及び顎関節頭の3次元的形態と咬合パターンについて解析を行い、顎関節窩の3次元形態に咬合様式が影響を与えることを明らかにした(Hosomichi)。さらに、不正咬合が顎関節頭の形態のみならず内部構造に影響を与えることを不正咬合モデルの動物実験により実証した(黒田ら)。不正咬合の治療前後のおける咀嚼筋活動の変化と適応について検討し報告した(Hosomichi)。
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