本研究は小児期の歯の萌出障害に対する包括的臨床研究を行うことを主目的として遂行しており、本年度は治療と予後に関連した包括的データベースを構築すると同時に、上顎犬歯の埋伏に関連した不足しているデータを追加するための論文報告を英文雑誌に行った。さらに、下顎第二小臼歯の処置法について、新たな見解を学会発表で提示した。本年度の研究成果の要約は下記の通りである。 1.萌出障害に関するデータベースを構築する上で治療と予後に関連する必要不可欠な要因を多方面から検討し、大まかではあるが特発性の下顎第二小臼歯埋伏については、フローチャートを考案した。遠心傾斜度の強い埋伏歯に対しては、歯根形成が未成熟なうちに何らかの処置を行うよりも、歯根形成がある程度進行してから処置を行うこと、両側性の軽度症例に対しては、さらに歯根形成を待ってから処置を開始することなどをまとめた。 2.上顎犬歯の移転について、従来はふた通りのタイプ分類のみが行われていたが、10症例の移転症例を検討した結果、新たな移転のタイプ(第一小臼歯と犬歯の顎骨内での垂直的な移転型)を提示することができた。その治療法についても、良好な予後を得るための新たな提案を行った。 3.近心傾斜度の強い上顎犬歯の重度症例についても検討を行い、軽度症例に対して行っている治療法(早期の乳犬歯抜去)を治療の初期段階では踏襲することによって、患児の身体的負担を軽減することが可能で、治療効果も高いことを国内外で初めて明らかにした。
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