本年度は、マクロファージの泡沫化に及ぼす口腔レンサ球菌感染の効果を検討した。ヒト単球細胞株THP-1をPMA存在下でマクロファージに分化させたものに口腔レンサ球菌Streptpcoccus sanguinisを感染させ、変性LDLを加えて培養したところ、50-60%の細胞においてオイルレッドで染色される油脂滴を細胞内に認め、泡沫化が促進されることが明らかになった。この泡沫化は加熱死菌体でも誘導されるが、一方、生菌感染ではMOI=50以上でマクロファージの細胞死が見られることが分かった。細胞死が起こるメカニズムを調べてみると、活性酸素(ROS)阻害剤の添加によって細胞死の抑制が見られ、生菌感染では感染マクロファージがROSを過剰産生することによって細胞死が引き起こされることが考えられた。他の病原レンサ球菌ではSLOやpneumolysinのようなpore-forming toxinが細胞膜にダメージを与えてマクロファージの細胞死を誘導するが、S.sanguinisにはそのような毒素遺伝子は報告されていない。そこで、菌体表層に存在する線毛piliなど病原性に関与する可能性のある遺伝子をゲノム情報をもとにクローニングし、そのノックアウト株を作成してマクロファージの細胞死にどのような病原因子が関与しているのかを調べたところ、piliそのものは細胞死には関与していないものの、fibronectinと結合し、菌の細胞付着に関与していることが明らかになった。
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