本研究は、IL-17刺激下ヒト歯根膜線維芽細胞における炎症性サイトカインの産生と細胞内シグナル伝達、さらにMMP-1遺伝子発現およびその制御機構について解明することを目的とし、1)IL-17刺激下ヒト歯根膜線維芽細胞における炎症性サイトカインの発現動態、2)IL-17刺激下ヒト歯根膜線維芽細胞におけるMMP-1遺伝子の発現とその調節機構について検討を行っている。 本年度は、1.ヒト歯根膜線維芽細胞の培養、2.RT-PCR法によるIL-17刺激下でのIL-1β、IL-6、TNF-αならびにMMP-lmRNAの発現の検出、3.ELISA法による培養上清中のIL-1β、IL-6、TNF-αならびにMMP-1量の検出を行った。その結果、IL-17刺激によってTNF-αmRNAの発現は認められなかったものの、IL-17刺激はIL-1β、IL-6ならびにMMP-1のmRNA発現に影響を与えることが明らかとなった。また、IL-17添加後、比較的早期にIL-6mRNA発現の増強が認められるのに対し、IL-1βならびにMMP-1mRNAの発現は、IL-6mRNAの発現後に増加した。また、培養上清中のIL-6量の経時的な増加が認められた。以上のことから、ヒト歯根膜線維芽細胞において、IL-17はIL-6mRNA発現を増加させること、その結果、IL-6産生も増加することが明らかとなった。また、IL-17刺激によるIL-6発現量の増加は、IL-1βならびにMMP-1のmRNA発現に作用する可能性が推測された。
|