本研究は、IL-17刺激下ヒト歯根膜線維芽細胞における炎症性サイトカインの産生と細胞内ジグナル伝達、さらにMMP-1遺伝子発現およびその制御機構について解明することを目的として検討を行っている。平成20年度の結果から、IL-17刺激によってIL-6のmRNAならびに培養上清中のIL-6タンパクの発現が増加することが明らかとなり、IL-17刺激下で産生されたIL-6によってMMP-1の発現が増加する可能性が示唆された。今年度は、IL-6刺激によるMMP-1の発現の有無とその変化、さらに骨吸収性に作用するIL-6刺激によるRANKLの発現の有無とその変化について検討した。 ヒト歯根膜線維芽細胞にIL-6、IL-6とsoluble IL-6R(sIL-6R)を添加して培養した後、RANKL、MMP-1 mRNAの発現を分析した。その結果、IL-6刺激はMMP-1ならびにRANKLのmRNA発現に影響を与えることが明らかとなった。sIL-6RによるRANKL、MMP-1の発現増加への影響については、現在継続して検討中である。以上のことから、ヒト歯根膜線維芽細胞において、IL-17はIL-6 mRNA発現ならびにIL-6タンパクの産生を増加させること、さらにIL-6によってRANKLならびにMMP-1 mRNA発現も増加することが明らかとなった。したがって、IL-17刺激によるIL-6発現量の増加は、MMP-1ならびにRANKLのmRNA発現に作用する可能性が推測された。
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