顎顔面骨格の一部である下顎頭軟骨は頭蓋骨とともに顎関飾を構成し、咀嚼などの複雑な運動に適応しているだけでなく、下顎骨の成長にも寄与しており、長管骨の関節軟骨と成長板軟骨の両方の機能をもつ特徴的な組織である。構造的に四肢の関節軟骨や成長板軟骨が薄い軟骨膜におおわれているのに対し、下顎頭軟骨は間葉系組織でおおわれており、胎生および出生後の下顎骨の成長はこの下顎頭軟骨の表層に存在する未分化な間葉系細胞が軟骨細胞に分化後、内軟骨性骨化が起こることによると考えられている。一方、Ten-m/Odz3遺伝子は、ショウジョウバエの体節形成遺伝子の中のペアルール遺伝子として同定され、ヒトからショウジョウバエまで様々な種で発現が認められており、発生時期における形態形成への関与が考えられている。本研究は下顎頭軟骨の形成、成長、機能維持におけるTen-m/Odz3の役割を検討することを目的としている。本年度は、ラットを用いて、下顎骨骨折治癒過程におけるTen-m/Odz3の発現をin situハイブリダイゼーション法を用いて観察した。骨折後7日、14日にパラホルムアルデヒドによる灌流固定を行い、下顎頭を摘出した。厚さ7μmの薄切切片を作成し、骨折治癒過程をトルイジンブルー染色、I型、II型、X型コラーゲン遺伝子のin situハイブリダイゼーションを行い観察し、Ten-m/Odz3遺伝子の発現パターンをin situハイブリダイゼーションを用いて検索した。その結果、Ten-m/Odz3遺伝子は下顎骨骨折治癒過程において、II型コラーゲンが発現する増殖軟骨細胞で強く発現していた。
|