(目的)ヒトの下顎第三大臼歯歯胚の細胞を用いたbiotoothの作製を目指す。そのために、1)間葉系幹細胞とエナメル上皮幹細胞の無血清培養法を確立する。2)ヒト第三大臼歯由来の細胞とマウス歯胚由来の細胞との組み合わせで歯を再生する。3)ヒト細胞のみでの歯の再生の可能性を検討する。(本年年度の結果)1)岩手医科大学附属歯科医療センター矯正歯科外来で摘出された下顎第三大臼歯歯胚を用いて、酵素処理ならびに機械的操作によって間葉系細胞およびエナメル上皮細胞の培養法を検討した。ヒト歯胚の上皮細胞ならびに間葉系細胞に対してDMEM+hamF12を基礎とした無血清培地による一次培養条件を決定した。これにより、歯胚再生に有効な細胞数を培養によって効果的に得ることが可能になった。またこれらの一次培養細胞にHPVl6E6とhTERTを遺伝子導入して不死化細胞を作成中である。今後はこの細胞も用いた歯の再生研究も行う予定である。2)摘出したヒト歯胚の多くが硬組織の形成がすでに始まったものが多く、この時期の歯胚細胞単独ではマウスやブタで成功したbiotoothの作成は困難で成功例は見られない。そこで、マウス歯胚細胞の組み合わせで歯の再生を試みた結果、胎生13日のマウス歯胚の間葉系細胞との組み合わせでヒト歯胚細胞を一部象牙芽細胞様に分化誘導可能なことがわかった。今後は、組み合わせのステージにさらに検討を加え、ヒト歯胚細胞の上皮をエナメル芽細胞に分化させる条件の検討を継続する予定である。3)2)で述べたようにヒト歯胚細胞でbiotoothを作製するためには、これらの細胞を脱分化させたり、他の細胞で誘導をかける必要があった。そこで、現在これらの細胞にWntシグナルの過剰発現やsp6の遺伝子導入を行い、条件を検討しているところである。
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