研究概要 |
【目的】口蓋形成にTGF-β3が極めて重要な働きをしていることは、二次口蓋形成期の融合上皮にTGF-β3の強い発現が見られることからも推測される一方、演者らはマウス口蓋上皮を用いた器官培養系で、TGF-βのレセブターの一つであるTβRIIIをsiRNAで発現抑制した結果、二次口蓋融合遅延を認め、TβRIIIの口蓋形成における重要性を明らかにした。さらに、TβRIIのknock out mouseは、部分的な口蓋裂を呈していることから、融合に関与していることも知られている。しかしながら、TβRIIとTβRIIIとの関連性およびそのsignalingについては、十分に明かとなっていない。そこで、今回演者らは、NIH3T3細胞を用いてTβRIIおよびTβRIIIの情報伝達経路について検索した。【試料および方法】NIH3T3細胞は構成的にTβRIIおよびTβRIIIを発現しており、TβRIIおよびTβRIIIに対するsiRNAを用いて両receptorの発現抑制を行った。さらに、siRNA transfection条件下で10ng/mlのhuman recombinant TGF-β3を添加し,transcription factorの発現についてreal time PCR法にて検討を行った。【結果】TβRIIおよびTβRIIIの発現は、それぞれ100nM siRNA transfectionにより約70%の発現抑制が確認された。siRNA transfection条件下でTGF-β3刺激を行ったところ、TβRII/TβRIII double knockdownを行った細胞では、それぞれの受容体単独をknock downした場合に比較し、transcription factor、特にRunx2が抑制されていることが判明した。【結論】上記の結果、TGF-β3のTβRIIおよびTβRIIIへの結合により、両receptorの相互作用の関与によってRunx2遺伝子発現を介して情報伝達を行っている可能性が示唆された。(本研究の一部は,平成20-22年度文部科学省科学研究費基盤(C),平成20年度日本大学学術助成金によるものである。)
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