前年度までに、離乳直後に抜歯して歯を喪失させ、その後、長期間飼育することでその後の成年期、老年期まで血中グルココルチコイド濃度が上昇し、海馬神経細胞が障害され、空間認知能が低下したこと、Glial fibrillary acid protein (GFAP)陽性細胞が増加したことなどを報告した。 そこで今年度は、今までと同様の動物である老化促進モデルマウスP8を用いて、歯の早期喪失が海馬歯状回におけるシナプス形成に及ぼす影響を検討した。脳内シナプスの量を計測するため、シナプスのマーカーであるシナプトフィジンの発現量を免疫染色法とウエスタンブロット法により定量的に解析した。 その結果、シナプトフィジンの発現量はコントロール群に比べて早期喪失老齢マウスで有意に減少していた。このことは、歯の早期喪失が海馬への情報入力量を減少させるものと考えられた。 以上の結果から、歯の早期喪失は海馬への情報入力を減少させ、その結果、空間認知能を低下させるものと考えられた。
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