これまで行われてきた咬合接触関係の検討は、上下顎咬合面においてみられる垂直的方向について行われた。しかし上下顎歯は周囲を歯根膜で覆われていることや咬合平面に対して歯軸傾斜が存在することや、隣接歯間には安静時においては空隙が認められ咬合時にはそれが閉鎖し食渣の停滞を防いでいると報告されている。咬合時に発生する隣接歯間に発生する圧を検討するために、まず模型による基礎実験を行った。乳犬歯、第一、第二乳臼歯を石膏模型上に植立し、圧センサを第一・第二乳臼歯官位挿入した。第二乳臼歯遠心部および乳犬歯近心部を固定し、乳犬歯・第一乳臼歯間に30μmおよび50μmのコンタクトゲージを挿入し、第一・第二乳臼歯間に発生する圧の測定を行った。その結果30μm挿入時には12.7kPa、50μm挿入時には16.3kPaの圧が発生していた。次に、上下顎中切歯間にセンサを挿入し、中切歯・側切歯間および側切歯犬歯間に30、50μmのコンタクトゲージを挿入し、中切歯間の圧を測定した。その結果、側切歯・犬歯間では30μm挿入時19.4kPa、50μm挿入時には20.6kPaの圧が発生していた。また、側切歯・犬歯間では30μm挿入時に7.7kPa、50μm挿入時には12.9kPaの圧が発生していた。さらに咬合時における上下顎切歯間に発生する圧を測定した。前述の実験と同様に中切歯間に圧センサを挿入し、咬合時において中切歯間に発生する圧を測定した。その結果、上顎では58.0kPa、下顎では20.9kPaの圧が発生していた。これまでに行われていた咬合時の歯の移動様相は歯冠隣接面部を閉鎖する方向に発生すると報告されており、本研究でも咬合時には隣接歯間に圧が発生していたことから。咬合時には隣接歯間を閉鎖する方向へ歯が移動し、食渣の圧入、停滞を防いでいることが示唆された。
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