研究概要 |
本研究の目的は、閉塞性睡眠時無呼吸症候群(Obstructive Sleep Apnea Syndrome ; OSAS)患者に対し、治癒成績とコンプライアンス(患者が指示通りに治療装置を使用できる割合)の向上に貢献でぎ、かつ副作用の少ない新規治療システムを開発し、その有効性を「ランダム化比較試験(Randomized Controlled Trial ; RCT)により検証するこである。 平成23年度は、前年度までに基本構造が決定された新規システム(舌位置制御装置)プロトタイプの有効性を検討するためにパイロットスタディを行った。対象は、終夜ポリグラフ検査によってOSASと診断された患者(N=6)であり、被験者を舌位置制御装置使用群(A群,N=3)とTongue Stabilizing Device使用群(TSD群,N=3)の2群に振り分けた。A群の被験者に対し、舌位置制御装置の口腔部分を作製し、同部分と圧コントローラーをチューブを用いて連結した後、圧コントローラーから口腔部分内側へ弱陰圧を作用させ、就寝時の舌位置保持をはかった。約1~2カ月の装置使用により、いびきおよび日中の過眠の改善が確認され、このときの陰圧を適正処方圧と判断した。口腔内診査および問診により、舌、歯牙、歯周組織、および顎関節に副作用がみられないことを確認後、簡易呼吸モニター(PMP300E,パシフィックメディコ)を用い、同システムの有効性を呼吸障害指数(Respiratory Disturbance Index ; RDI)を指標に検討した。一方、B群の被験者に対してTSDを処方し、使用に慣れた段階でA群同様にRDI変化を検討した。その結果、A群ではRDI(mean±sd/hr)は26.7±14.1より12.3±8.8へ、B群では28.2±22.4より12.2±6.2となり、RDIの減少率はそれぞれ51.2%と50.4%であった。以上の結果から、本研究において開発された舌位置制御装置プロトタイプは、既存の口腔内装置と同等のOSAS治療効果を有する可能性が示唆された。
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