本研究の目的は、発生後の歯周組織におけるマラッセの上皮遺残の機能を明らかにすることである。 平成20年度は、間葉系細胞に対する上皮細胞の機能解析の中で特に、1.歯根膜由来細胞のセメント芽細胞への分化調節、2.ヌードラット移植モデル作製に焦点を絞り行った。 以下に詳細を述べる。 1 歯根膜由来細胞のセメント芽細胞への分化調節 (1)セメント芽細胞特異的タンパクのレトロウィルス発現ベクターを構築した。 (2)セメント芽細胞特異的タンパクの発現をRNAとタンパクレベルで確認した。コントロール細胞には、ヒト骨芽細胞とヒトセメント芽細胞(広島大学口腔病理学教室、高田隆先生よりご提供)を用い比較検討した。 (3)レトロウィルス発現系を用いて、セメント芽細胞特異的タンパク質発現ヒト歯根膜由来細胞を作製し、タンパクの骨芽細胞分化ならびに石灰化関連マーカー発現に対する影響を検討した。セメント芽細胞発現タンパクは、骨芽細胞ならびに関連遺伝子を負に調節することが示された。 (4)ヒト歯根膜由来細胞を骨芽細胞分化させると、逆にセメント芽細胞特異的マーカーの発現は抑制されることが示された。 以上の結果より、セメント芽細胞分化の独自の指標を設け、今後、上皮細胞の間葉系細胞の分化(とくにセメント芽細胞への分化)についてその機能解析を進めたい。 2 ヌードラット移植モデル作製 (1)レトロウィルス発現系を用いてEGFPタンパク発現ヒト歯根膜由来細胞を作製。 (2)ヌードラット下顎に歯槽骨ならびにセメント質、象牙質を含む欠損を作製した。 (3)細胞転写技術を用いてヒト羊膜に1)で作製した細胞を転写し、2)で作製した歯周組織欠損に移植、術後脱灰パラフィン包埋切片を作製、移植法の最適化を行っている。
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