本研究の目的はエイジングを視点として、マウス歯周炎モデルにおける病態形成のメカニズムを明らかにするとともに、歯周炎と動脈硬化症との関連についてその関連機序について明らかにすることである。 本年度はマウスにおける歯周炎モデルの作成とその評価を中心に行った。歯周病原細菌Porphyromonas gingivalis (P. gingivalis) W83株の口腔感染により作成したマウス歯周炎モデルについて、その疾患モデルとしての妥当性を歯槽骨の吸収により確認した。さらに全身的なマウス個体への影響について血清脂質、動脈硬化と関連するマーカーについても検討した。具体的にはP. gingivalisをC57 BL/6マウスに経口感染(3日毎に1x10^9CFU)し、30日後の歯槽骨破壊を計測した。P. gingivalis感染後の歯槽骨吸収についてマイクロCTを用いて検出することによりによりヒト歯周炎と同様な歯槽骨吸収がマウスモデルにおいても観察された。P. gingivalisの口腔内感染による血清中炎症マーカーであるIL-6、CRPの変化について検討したところ、経口感染後30日後においてIL-6、CRPともに有意な変動が認められた。血液中よりP. gingivalis DNAは検出されなかったことより、口腔内局所の感染により全身的に循環するIL-6、炎症マーカーが変動したものと考えられた。さらに動脈組織における遺伝子発現の変化をDNAマイクロアレイにより検討したところ、101の遺伝子群において有意な発現の変動が認められた。このなかには動脈硬化症と関連するとされる既知の遺伝子が含まれていた。 この歯周炎マウスモデルにおいては、P. gingivalisの口腔内感染が(抹消血中炎症マーカーを指標とした際の)全身的な炎症応答を誘導し、動脈組織における遺伝子発現の変化も誘導することが示された。次年度以降はさらにこの作用機序について検討する。
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