本研究の目的はエイジングを視点として、マウス歯周炎モデルにおける病態形成のメカニズムを明らかにするとともに、歯周炎と動脈硬化症との関連についてその関連機序について明らかにすることである。 H20年度に作成したマウスにおける、歯周病原細菌Porphyromonas gingivalis (P.gingivalis)W83株の口腔感染モデルを用いて、感染による全身的なマウス個体への影響について大動脈中の遺伝子発現の変化、血清脂質の変化、動脈硬化病変の形成について検討した。P.gingivalisをC57 BL/6マウスに経口感染(3日毎に1x10^9CFU)し、4週間、32週間後、大動脈の動脈硬化関連遺伝子群発現の変動が観察された。また感染により血清HDLコレステロールの減少が認められた。しかしながらC57BL/6バックグラウンドのマウスにおいては実際に動脈硬化病変の発症は認められなかった。ApoE欠損マウスにおいては長期感染によりHDLコレステロールが減少、LDLコレステロールが上昇し、動脈硬化病変が促進された。実験期間を通して血液中よりP.gingivalis DNAは検出されなかったことより、口腔内局所の感染がIL-6などのサイトカインを関して間接的に動脈における炎症反応に影響していると考えられる。 この歯周炎マウスモデルにおいては、P.gingivalisの口腔内感染が全身的な炎症応答を誘導し、動脈組織における遺伝子発現の変化に加え、血清脂質の動脈硬化症リスクを高める方向への変動も誘導することが示された。
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