研究分担者 |
畑田 加珠 岡山大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教 (50362992)
高柴 正悟 岡山大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (50226768)
峯柴 淳二 岡山大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教 (00509383)
大森 一弘 岡山大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教 (20549860)
|
研究概要 |
インターロイキン6(IL-6)は様々な細胞に作用して,歯周病の病態形成に関与する炎症性サイトカインである。IL-6が標的細胞の膜型IL-6受容体(IL-6R)と結合した後,そのシグナル伝達分子gp130の下流域の細胞内シグナル伝達系が活性化する(IL-6 classical-signaling)。一方,可溶型IL-6RはIL-6シグナルのアゴニスト作用を有することが知られ,細胞外領域においてIL-6と二量体を形成した後にgp130と結合する(IL-6 trans-signaling)。すなわち,可溶型IL-6RはIL-6によって惹起される様々な炎症反応を増強する。したがって歯周炎組織における可溶型IL-6Rの産生を制御できれば,歯周炎症制御の新たな治療戦略の確立に繋がる可能性がある。MMP-3は,MMP-1を前駆型から活性型に変換する作用を持つプロテアーゼとして,歯周病悪化の一翼を担うことが知られている。しかしながら,MMP-3が炎症性細胞の膜型IL-6Rのシェディングを誘導して,可溶型IL-6Rの産生を促進するかどうかは不明である。 今回,我々は可溶型IL-6Rの産生機序を調べるために,MMP-3のシェディング機能に着目し,ヒト単球系細胞株THP-1による可溶型IL-6Rの産生性を検討した。 その結果,マクロファージ様THP-1細胞において, 1. 膜型IL-6Rおよび可溶型IL-6Rは遺伝子レベルで発現した。 2. MMP-3阻害剤(100nM)の添加によって,可溶型IL-6Rの産生量が有意に抑制された。また,TAPI-1(10μM)の添加によっても,可溶型IL-6Rの産生量が有意に抑制された。 以上のことから,マクロファージ様THP-1細胞からの可溶型IL-6Rの産生機序として,選択的スプライシングおよびMMP-3による膜型IL-6Rのシェディング機構の関与が示唆された。すなわち,MMP-3は,内因性の切断酵素TACEとともに,外因性の切断酵素として可溶型IL-6Rの産生亢進作用を有すると考えられる。このことは,歯周炎症の増悪を制御し得る新たな標的カスケードになるものと期待される。また,次年度は,本実験系に高グルコース(25mM)入りの培地を用いた系を加えて,可溶型IL-6R産生性の高グルコースの影響を調べる予定にしている。
|