研究概要 |
昨年度の研究から,RhoA-ROCKシグナルは歯根膜細胞の細胞骨格分子の調節を介して硬組織形成細胞への分化を促進する可能性が示唆された。本年度は,1.歯根膜細胞の細胞骨格による分化制御メカニズムを調べ,2.RhoAおよびROCKを過剰発現した歯根膜細胞株の性状解析を行うことによって歯根膜細胞移植の可能性を探索した。 1,分化誘導培養した歯根膜細胞をリアルタイムRT-PCR法にて調べた結果,BMP-214,Wnt3a/5a,ALP、Runx2,Osterix,Osteocalcinという硬組織の形成に関連する遺伝子や,間葉系幹細胞から硬組織形成細胞への分化過程に関与するfour and a half LIM domains 2(Ffl2)やintegrin alpha 5(Itga5),そして細胞骨格と硬組織分化を制御するserum response factor(SRF)などの遺伝子発現が明らかになった。 2,上記遺伝子発現のうち,ROCK特異的阻害剤(Y-27632)の添加によって,BMP-4およびWnt3a/5aの進伝子発現量が著に変動した。すなわち,歯根膜細胞の細胞骨格による分化制御メカニズムは,BMPとWntのシグナリング間の協調制御が重要な役割を果たしている可能性がある。 3,歯根膜細胞にRhoAおよびROCK過剰発現ベクターをエレクトロポレーション法にて遺伝子導入後,選択培養を行うことによって,アクチン線維の著しい増加と形態変化を伴う歯根膜細胞株を分離したが,この細胞株は著しい増殖能の低に伴って細胞死を示した。 以上の結果から,RhoA-ROCKシグナルは歯根膜細胞の細胞骨格分子の調節を介して,硬組織形成細胞への分化に関与る遺伝子発現を制御し,分化過程を促進することが分かった。さらに,歯根膜細胞は細胞骨格分子と増殖因子等との調作用によって分化・成熟する可能性が示唆された。
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