LL37が歯周炎予防薬と歯周組織再生治療薬という二つの異なる視点から臨床応用可能な因子であるかを明らかにすることが本研究課題の目的である。本年度は、第一に抗菌ペプチドであるLL37(34-mer)および陽イオンの帯電を増強した新規ペプチドLL37(34-merLL)とLL37(34-mer LLKKK)をペプチド合成装置を用いて固相法で合成した。合成ペプチドからレジン残基を切断後、析出、洗浄、凍結乾燥した。凍結乾燥されたLL37のペプチドをoctadecyl 4PWカラムを用いた逆相高速液体クロマトグラフィーで精製した。引き続き、MALDI-TOF/MSによる質量解析によって3つのペプチドの分子量を確認した。 次に、培養ヒト歯周靭帯細胞と培養ヒト歯肉上皮細胞の機能発現に及ぼすLL37(34-mer)の影響を調べた。歯周靭帯細胞においては、血管に新生に関わる血管内皮増殖因子(VEFG)発現に及ぼすLL37(34-mer)の影響を調べた結果、LL37(34-mer)は歯周靭帯細胞のVEGFのmRNA発現に影響を及ぼさなかった。歯肉上皮細胞においては、細胞間接着に関わるE-カドヘリン発現に及ぼすLL37(34-mer)の影響を調べた。LL37(34-mer)は歯周病原性細菌であるA.aの死菌によって誘導されるE-カドヘリンmRNAの発現量の減少を抑制した。以上、組織再生に必要な血管新生におけるLL37の影響を見出すことはできなかったが、LL37が歯周炎の予防に有効と考えられる作用を有していることが示唆された。さらに、LL37(34-mer)が歯髄細胞のmigrationを促進することを明らかにした。従って、LL37(34-mer)が歯周靭帯細胞のmigrationを促進する可能性が考えられた。
|